テレビ番組を見ていた父が、急に思いついた。
「かわいいな。俺もあんな風に犬を飼ってみたい」
母はアレルギーがある。「でもプードルなら毛が抜けないから、大丈夫かも」と、家族でブリーダーを訪ねた。そこで、愛犬となる生後2カ月のムアとノアに出会った。2009年のことだ。
大阪市出身の黄瀬知美さん(35)の実家が経営する会社は、人間の赤ちゃん用の抱っこひもを作っていた。そのサンプル商品で愛犬を抱きかかえて、自転車で会社へ通勤する生活がはじまった。社員らは社内で2頭をなでたり、ボールで遊んだりして、癒やしを感じていた。
保護犬の厳しい現実
「“2人”が来てから、会社の雰囲気が和らいだ。ありがとう」。感謝の気持ちから、彼らの親のことを知りたいと思い、インターネットでペット業界について調べ始めた。そこで知ったのは、飼い主のいない保護犬が数多く殺処分されたり、多くの犬を抱え込んで飼育できなくなる「多頭飼育崩壊」が増えたりしているという現実だった。
黄瀬さんはあることがきっかけで、保護犬を救うべく行動を起こします。記事後半では、「ドッグスリング」が誕生し、意外な場所でつかわれていることが明らかになります。
この目で現場を確かめようと、大阪や奈良の保健所、動物愛護団体を訪ねた。保護犬をなくしたいという思いをさらに強くしたが、そのためには保護団体を作らないといけない。自分で寄付を募って運営するのは難しいと思っていた。
転機は2015年。父から会…
【5/10まで】記事読み放題コースが今なら2カ月間無料!詳しくはこちら
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル